Quantcast
Channel: ドラゴンの抽斗 ブラック企業アナリスト新田龍が語る「はたらく」「しごと」「よのなか」
Viewing all articles
Browse latest Browse all 296

もう「解雇規制緩和」の議論はやめよう 総合的な変化踏まえ「再定義」を(1)

$
0
0

ここ数年来、アベノミクスの影響などもあり、株高、雇用増
といった効果が喧伝されてきた。

しかし、細かくデータをみると、表面的にはわからない実態が
明らかになってくる。

2014年末にNHK社会部が報道発表した、5000万件にものぼる
データ統計から導き出されたのは・・・

・2011年度から13年度にかけて、全国すべての都道府県で
 求人数は増加
・ただ求人の多くは非正規雇用で、離職率が高い仕事の
 割合が多い
・実質賃金は、2014年11月まで17か月連続で前年同月を
 下回っている


という事実である。

すなわち、景気や雇用が回復したように見えても、正社員の
雇用はそれほど増えておらず、実質賃金も上がっていない

のだ。

その理由として考えられることは多々あるが、私はその中でも
「解雇規制」の存在が大きく影響を及ぼしていると認識している。


そもそも「解雇規制」とは?

日本では、「正社員の解雇は規制が難しい」と言われる。

しかし民法では

「(期間を定めなかった時は)当事者のどちらからでも
 一方的に解除を申し入れることができる(民法627条)」、

つまり、退職も解雇も自由となっていて、矛盾しているようだ。

これは一体どういうことなのだろうか。   

話は戦前の工場労働にさかのぼる。

当時は労働基準法もなく、工場労働者は劣悪な環境で
働かされる、すなわち「経営側から搾取される」ことが多かった。   

民法の契約はあくまで「当事者の立場が対等」であることが
前提になっているのだが、「労働者」と「経営者」では対等では
ない。そんな民法では労働者の保護が不十分だということで、
1947年(昭和22年)に「労働基準法」ができ、解雇する場合の
最低基準が定められた。

「30日以上前に予告する、または同日数分以上の
 平均賃金を払う」


という条項だ。   当時は

「30日分の平均賃金を払えば、特に理由がなくても自由に
 解雇できる」

という認識が一般的だったが、1950年代に多くの労働争議が
起こり、解雇にまつわる裁判の判例が積み重なっていった。

それによって段階的に労働者に対する法的保護がなされて
いき、解雇権を濫用できない方向性となっていったのである。
それら判例に基づいた原則は現在の「労働契約法」に条文化
されている。   

現在の日本において正社員の整理解雇を行おうとすると、
皆さんご存知のとおり「4要件」が必要とされる。すなわち

「人員整理の必要性」
「解雇回避努力義務の履行」
「被解雇者選定の合理性」
「手続の妥当性」


というもので、解雇はこの要件にすべて適合しないと無効
とされる。これにより、日本の正社員の解雇は厳しいと認識
されているのだ。   

(ただし近年の裁判では、4要件を厳格に運用するのではなく、
 「総合的に考慮した結果、相当と認められれば解雇を有効
 とする」、すなわち「要件」ではなく「要素」として捉える判例
 も増えている)

ーつづくー

もう「解雇規制緩和」の議論はやめよう 
総合的な変化踏まえ「再定義」を

http://www.j-cast.com/kaisha/2015/02/05227037.html


Viewing all articles
Browse latest Browse all 296

Trending Articles