2012年末に厚生労働省がおこなった「社内パワハラ」について
の調査結果が手元にあるのだが、「7割以上の企業が社内外に
相談窓口を設置していた」にも関わらず、パワハラを受けた人の
対応で最も多かったのは「何もしなかった」の46.7%。
窓口を設けたところで、プライバシーや人事評価への影響を
恐れて相談しないケースは多いのだ。(実際、コンプライアンス
を推進しているはずの大手光学機器メーカーO社や大手製薬
メーカーN社などで、内部告発をした社員が不当な扱いを受けた
事件が発覚している)
体感値としては、ブラック企業から何かしらの被害に遭っても、
「泣き寝入り」か「黙ってその会社を去る」という形で、結局
会社に対して「何もしない」人が8割くらいという印象である。
手続き的に時間や手間がかかったり、法的対処をすれば
お金がかかったりもするので、面倒に感じてしまうのも
致し方ないのだが、我慢や泣き寝入りがブラック企業を
助長し、新たな犠牲者を生むことにも繋がりかねない。
「結局、得をするのはブラック企業だけ」というのは絶対に
容赦できない問題である。
それでは、あなたの会社が「ブラック企業だ!」と感じたとき
(感じる前も含めて)にやっておきたいことを段階別に
アドバイスしていこう。
(1)普段から同僚同士で助け合い、困ったときに味方に
なってくれる人間を増やしておく
(2)「労働組合」に入り、会社と対等に主張できるようにする
⇒誰にも相談できず、一人で抱え込んでしまうことが問題解決
を遅らせる。まずは「自由にモノを言える関係性」を創って
おくことが重要だ。
自社内に組合がなくても、正社員でなくても、ひとりでも入れる
組合は存在している(たとえば、首都圏青年ユニオン)。
(3)「労働法」を知っておく
⇒何が違法なのかが分かれば、問題意識を持ちやすくなる
(参考:厚生労働省が分かりやすくまとめた資料リンク)。
(4)とにかく「記録」と「証拠」をとっておく
⇒タイムカードや違法な業務指示のメール、就業規則などは
コピーをとっておき、暴言やパワハラ発言はICレコーダー
に記録。1日のスケジュールをメモしておくのもいい。
これらは全部、法的対処をする際の資料になる。
(5)「労働基準監督署」に告発する
⇒いわゆる「労基署に駆けこむ」というやつだ。
ただし、労基署はあくまで「労働基準法に則って事業所を
取り締まること」が仕事で、労働者のお悩み相談所ではない。
賃金未払いなど、確実な証拠が揃っている悪事が優先
されるので、その前提で利用したい。
(参考記事「労働基準監督署にうまく動いてもらうための
3つのポイント」)
(6)都道府県の労働局に「あっせん」を依頼する
⇒労働法の専門家であるあっせん委員が、労使双方から
個別に話を聞いてあっせん案を作成し、それを双方が
受け入れれば和解が成立するという公的制度である。
(7)「労働審判」をおこなう
⇒2006年に新しくできた、「あっせん」と「裁判」の中間的
な制度。労働問題の専門家である労働審判員が双方の
言い分を聴いて審判を行い、基本的に調停、和解による
解決を目指すもの。
「原則として3回以内で結審」「約2か月半で結果が出る」
「結果には強制力がある」という点で、ブラック企業対策
の切り札になると注目されている
(参考記事「裁判は大変すぎる? ならば「労働審判」で
ブラック企業と戦おう」)。
(8)「裁判」に訴える
⇒最終手段だが、弁護士費用を合わせると数十万円、
そして1年以上の裁判期間がかかる覚悟が必要である。
(9)「ブラック企業アナリスト」に情報共有し、世論を動かす
⇒オチのようだが、意外とそうでもない。
「正攻法では解決困難な問題を、世論を喚起することで
解決に導く」のは私の仕事のひとつだ。たとえばこの
「野村総研、強制わいせつ裁判で敗訴?被害者女性への
組織ぐるみの脅迫行為が認定」という事件は、私が数年
越しで関わった案件である。 タイミング的には、(4)
あたりの段階でお声掛け頂ければお力になれるはずだ。
最後に、採用側の人事責任者、採用担当者にもお願いである。
思いがけずブラック企業に入ってしまう「不幸なミスマッチ」に
遭ってしまった人が離職後に応募してきた場合、覚悟を評価
して、寛大な気持ちで採用して頂きたい。
入った会社がブラック企業だった…
泣き寝入りしない「1プラス9」の対処法
http://www.j-cast.com/kaisha/2014/04/05200850.html