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10月30日(水)放送 NHK「おはよう日本」でのコメント全文
10月30日(水)放送のNHK「おはよう日本」内のクローズアップ
特集で「大卒3年後の離職率が高い業界」がテーマとして
採り上げられることとなり、私も取材協力&コメントをさせて頂いた。
当日7時20分頃から放送予定なので、タイミングが合えば
ご覧頂きたい。
たぶん尺的に全てのコメントは流れないと思われるので、
長文恐縮だが以下に主張を詳説させて頂く。
(とはいえ最大公約数的な回答なので、ヌケモレがあれば
ぜひ補足頂ければ幸いだ)
<なぜ、大卒3年後の離職率が高くなってしまうのか?>
飲食業を例にとると、大きな原因として業界の
「構造的側面」
「経営的側面」
「日本的メンタリティ面」
の3つが挙げられる。
「構造的側面」
【需要不足なのに供給過多】
飲食市場規模は縮小しているにも関わらず、関わる人の数と、
一部業態の店舗数は以前よりも増えている。
飲食市場規模のピークは1997年の約29兆円、店舗数は91年の
85万店がピークで、その後10年でそれぞれ20%近く減少している。
しかしその間も、居酒屋業態の店舗数は10%増加、労働者数は
386万人から440万人へと14%増加している。
小さい市場規模の業界に多くの社員がひしめいているわけだ。
【労働集約型で、人件費割合が大きい】
単純労働力の提供が収益の源泉となっており、機械化が難しく、
売上に占める労務費の割合が高いため、給与が圧縮対象に
なりやすい。
「経営的側面」
【高度なスキルは不要で、労働力確保が容易】
多くの仕事が単純作業で、高度な知識や経験は不要。
採用対象となる母集団は数多いため集まりやすく、仮に誰かが
辞めても「また雇えば問題ない」というイメージができ、経営側
にとって「誰でもできる」「代わりはいくらでもいる」という考えに
なりやすい。結果的に「人を育てる」意識が低くなり、低賃金で
こき使いやすくなる。
【経営陣の努力不足、アイデア不足】
経営者が安易に「値下げ」や「営業時間延長」に走ってしまうと、
しわ寄せが従業員に来ることになる。
「労基法なんか守ってたら利益は出せない」などと開き直り、
薄給で責任感をもって頑張ってくれる社員に甘えて、利益が
出るシステムを創ってこなかった責任は重い。
【採用時の情報提供が不充分】
応募者減を避けるため、採用時には「昇給する」「社風がいい」
などと耳に聞こえのいいことしか言わず、「ハードワーク」とか
「重いプレッシャー」といったネガティブな情報を故意に伝えない。
結果的に応募者の心構えが足りず、入社後ミスマッチを感じて
辞めてしまうことに。
「日本的メンタリティ面」
【労働に対する価値観】
「若いうちの苦労は買ってでもしろ」
「石の上にも三年」
「努力は報われる」
といった考えを都合よく利用し、理不尽な業務量を強要する。
責任感が強い社員ほど「自分が頑張らなければ…」と一人で
抱え込み、過労状態に。
また同じ薄給激務状態でも、チェーン店だと叩かれて、
高級料亭やミシュラン星付店だと「修行」の名の下に美談に
なるのもダブルスタンダード。違法な労務管理はすべてNG。
【おもてなし文化への甘え】
ユーザーにとって「お客様は神様」という意識が根強く、会社も
客も、過剰な水準の接客サービスを従業員に強いる。
これまたしわ寄せは従業員に。
解決策としては、まずは違法状態を看過しないことが大前提だが、
まずは経営陣が
「未払い残業ゼロ&高待遇でも利益を出せる仕組み」
を創ることである。
同業界においても、不況下で売上を伸ばしている会社は確実に
存在しており、企画やマネジメントなど相応の努力をおこなって
いることが共通点だ。
また、「徹底的な情報開示」も必須である。
「当社はこれくらいの残業とプレッシャーがあるが、
その分これだけのメリットを提供する」
という具合に、不都合な真実を赤裸々にオープンにするのだ。
応募者数は減るだろうが、その分覚悟を決めた人だけが参画
することになるだろう。
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日経ビジネス記事「なぜユニクロだけ“ブラック叩き”にあうのか」にてコメント
日経ビジネスの記事
「なぜユニクロだけ“ブラック叩き”にあうのか」
にてコメント。ユニクロが批判を受ける理由を、
3つの要素から分析している。
(1)幅広い世代、地域で話題を共有できる
ユニクロの認知度が高く、誰もが手に取り、体験したことが
ある、という点が「共通言語」を生み、批判が拡散しやすくなる
のがポイントだ。これはワタミも同じ。
逆に、一般的な知名度が低い中小零細企業や、BtoBビジネス
の企業、事業展開が特定の地方や世代だけに限られている
企業は「どこそれ?知らない」でハナシが終わってしまい、
話題にさえならない。
(2)経営者がよく知られている
ブラック批判されるとき、企業自体のみならず、その経営者も
対象となることがある。しかし件の経営者の名前や顔、個性が
分かりづらい企業の場合、批判の矛先は向きにくいものだ
(余談だが、「しまむら」の社長は島村さんではない)。
柳井氏の場合、多くの消費者がその名前を聞き、顔を思い
浮かべることができるほど知られた存在だ。それゆえに、
経営者の知名度がない企業よりは批判されやすくなってしまう。
あとは会社が儲かっているとか、多額の個人資産を持って
いる、といった点も「なぜ社員に還元しないのか」などと
感情的に批判する人を生んでしまっている面もある。
(3)採用時と就職後のミスマッチがある
ユニクロが今のような批判を受けるようになるまで、その労働環境
や社風について知る人はあまり多くはなかったはずだ。
むしろ同社は
「積極的な世界進出を志し、革新的な商品を打ち出す
新進気鋭のSPAチェーン」
というイメージが強かった。
柳井氏の言葉に嘘はないが、同社では採用段階で
「当社は厳しい」と明確に説明していなかった。
入社前に抱いていた職場イメージと、実際の現場に大きな
乖離があったから、ミスマッチを感じた社員が「ブラック」と
騒いだことも一因として存在する。
だが実際には、ユニクロに対する批判がバカらしくなるほど
「ブラック度」の高い企業はたくさんある。
ユニクロの影に隠れた真のブラック企業を撲滅しない限り、
本当の意味で働きやすい労働環境を実現することはできない。
【日経ビジネス】
「なぜユニクロだけ“ブラック叩き”にあうのか」
にてコメント。ユニクロが批判を受ける理由を、
3つの要素から分析している。
(1)幅広い世代、地域で話題を共有できる
ユニクロの認知度が高く、誰もが手に取り、体験したことが
ある、という点が「共通言語」を生み、批判が拡散しやすくなる
のがポイントだ。これはワタミも同じ。
逆に、一般的な知名度が低い中小零細企業や、BtoBビジネス
の企業、事業展開が特定の地方や世代だけに限られている
企業は「どこそれ?知らない」でハナシが終わってしまい、
話題にさえならない。
(2)経営者がよく知られている
ブラック批判されるとき、企業自体のみならず、その経営者も
対象となることがある。しかし件の経営者の名前や顔、個性が
分かりづらい企業の場合、批判の矛先は向きにくいものだ
(余談だが、「しまむら」の社長は島村さんではない)。
柳井氏の場合、多くの消費者がその名前を聞き、顔を思い
浮かべることができるほど知られた存在だ。それゆえに、
経営者の知名度がない企業よりは批判されやすくなってしまう。
あとは会社が儲かっているとか、多額の個人資産を持って
いる、といった点も「なぜ社員に還元しないのか」などと
感情的に批判する人を生んでしまっている面もある。
(3)採用時と就職後のミスマッチがある
ユニクロが今のような批判を受けるようになるまで、その労働環境
や社風について知る人はあまり多くはなかったはずだ。
むしろ同社は
「積極的な世界進出を志し、革新的な商品を打ち出す
新進気鋭のSPAチェーン」
というイメージが強かった。
柳井氏の言葉に嘘はないが、同社では採用段階で
「当社は厳しい」と明確に説明していなかった。
入社前に抱いていた職場イメージと、実際の現場に大きな
乖離があったから、ミスマッチを感じた社員が「ブラック」と
騒いだことも一因として存在する。
だが実際には、ユニクロに対する批判がバカらしくなるほど
「ブラック度」の高い企業はたくさんある。
ユニクロの影に隠れた真のブラック企業を撲滅しない限り、
本当の意味で働きやすい労働環境を実現することはできない。
【日経ビジネス】
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日本の1周半ほど先行く?フランスの「深夜営業」論議
<予備知識>
・1週間あたりの「法定労働時間」
[日本] 40時間
[フランス] 35時間
・両国の「深夜労働」の定義
[日本] 午後10時~午前5時まで。
割増賃金を支払えば、特に規制なし。
(18歳未満は禁止)
[フランス] 午後9時~午前6時まで。
この時間帯は原則として深夜労働禁止。
(一部の業種と観光地区のみ例外的に許可)
フランスでは労働時間について厳しい規制が課せられており、
商店は早い時間に閉まるし、日曜も基本的に営業していない。
ただシャンゼリゼ通りなどの観光地区は例外的に夜間営業が
認められていて、例えば化粧品チェーン「セフォラ」は0時
(休前日は1時)までオープンしている。
そしてこの度、長時間営業に反対する同社の労組が改善を訴え、
裁判の結果「21時以降の営業を禁じる」判決が下ったのだ。
この時点で日本より1周ほど先を行っている気がするのだが、
フランス国内ではこの判決に対して反対の意見も多いという。
同社は
「夜間営業は客のニーズに応じてやっていて、年間売上の
20%が21時以降のもの」
「この判決で50人以上が職を失う」
と反発している。そして国内の議論でも、失業率が高まっている
(直近5年で3%増加の10.9%。ちなみに日本は4.0%)ことを受けて、
「働いて売上を伸ばしたい企業を
法で縛るのはいかがなものか」
「稼げる店は稼いで、雇用創出すべき」
と考える人が増えているようだ。
フランスが先を行っているのか、
日本が世界をぶっちぎってるのか…
個人的には「ニーズに応えて営業し、雇用創出を」という意見
には賛成だが、労働者には法に則った報酬を支払うことが
大前提であるべきだし、経営者は「割増賃金を支払っても
利益が残る仕組み」を用意すべきであろう。
【ル・フィガロ 記事】
「Sephora Champs-Élysées condamné à fermer à 21 heures」
http://www.lefigaro.fr/societes/2013/09/23/20005-20130923ARTFIG00461-sephora-champs-elysees-condamne-a-fermer-a-21-heures.php
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11月16日(土)、早稲田大学「自己分析セミナー」に登壇
早稲田大学の現役就活生に告ぐ。
明日11月16日(土)は毎年恒例、私が「自己分析セミナー」に
登壇する日である。
毎回立ち見続出の、自分で言うのもなんだが人気講座だ。
採用の裏話含めネタ満載でお送りするので、万難排して臨む
ように。就活の成功は保証しよう。
10時~、13時~、16時~の3回開催、各回120分である。
予約不要、参加無料。場所は戸山キャンパス学生会館3階、
キャリアセンターセミナールームだ。
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早稲田大学の学生が選ばれる理由
我らが母校、早稲田大学の就活講座に登壇してきた。
毎年この時期の恒例だ。
慶応に比べてそもそも学生数が多いためプレミアム感が薄く、
後輩の面倒見もそれほどよくないと思われている早稲田だが、
2012年度の「人事部長が選ぶ役立つ大学ランキング」
(ダイヤモンド社調査)では見事ワンツーフィニッシュ
(1位:早大理系、2位:早大文系)を決めている。
誌上では役に立つと感じる理由として、「優秀であるが、変な
プライドを持っていない」といった点が挙げられていたが、
実際の体感としてはどうか。
結論としてはもう「講座開始前から違いを感じる!」というのが
個人的な印象であった。まとめると、ポイントは以下の通り。
・「当たり前レベル」が高い
「講座開始5分前には会場に入っている」
「遅刻しない」
「職員や講師に挨拶する」
「会場では前方から詰めて座る」
「私語をしない」…
といったモロモロのことだ。
「当たり前でしょ!?」と思われるかもしれないが、現在の大学教育
現場をご存じの方ならそれがなかなか難しいことをお分かりの
はずだ。
しかし彼ら早大生は普通に、かつ指示を受けずともできている。
これだけでも、「なんだか安心して仕事を任せられそう…」
といった印象を受けてしまうものだ。
・指示に対して素早く、かつ的確に反応できる
単に「指示に従って行動する」だけならその他多数の学生でも
できるが、彼らが違うのはその反応の素早さと的確さである。
いくらワークで騒がしく話合ってたとしても、
「じゃあ時間になったので、これから説明します」
と一言いえば途端に静まる。水戸黄門にでもなった気分だ。
またそのワークの手順についても、普通なら段階毎に細かい
説明を要するものなのだが、彼らに対しては
「最初にコレをやって、次にコレで、最後にコレを」
という1回の説明できちんと理解し、進めることが可能なのだ。
採用したくなるぞ。
・素直で熱心
そもそも自由参加の講座なのに、秋晴れの土曜日の午前中から、
延べ300人も集まってくるのである。素晴らしい熱意だ。
また希望者には、講座終了後に投影用資料をメール返信の形で
差し上げているのだが、そのメールがまた丁寧でイイ。
「これまで就活に対して臆病な自分がいましたが、
これを機にアクションを起こしてみようと思えました」
…キュン。 全力で応援したくなってしまうではないか。
まあそんなわけで、多少の後輩贔屓もあろうが、
早大生は素晴らしい!
…とはいえ、これらの要素は他大の就活生も、社会人でさえも
これから実践できることばかり。
自らの境遇に何かしらの不満を持つヒマがあったら、
ひとつでも行動していけば着実な変化が訪れるだろう。
写真はそのワーク中の様子と、
講座終了後のお楽しみ、高校時代からの常連「オトボケ」の
「ジャンジャン焼」だ。旨い。
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厚生労働省「ブラック企業への立入調査結果発表」を受けてコメント
厚生労働省から「ブラック企業への立入調査結果発表」が
あったことは、皆さん報道でご存知の通りだろう。
本年9月に全国5,111事業所に調査が入り、その8割、
4,189事業所で労基法違反があったことが判明した。
本件について、昨日と今日はメディア各社さんから取材攻勢
を受け、各番組&各誌でコメントさせて頂いた。
ただ尺的にすべて報道されることはないであろうから、
以下に要点を表明しておきたい。
<この数字は、これまでの労働行政の必然的結果である>
もちろん、違法状態を看過している企業に問題があるわけだが、
「この程度の違法は当たり前」という雰囲気を創ってしまった
のは他ならぬ労働行政であり、司法判例である。
これまでも繰り返し述べてきたが、現在の労働法規は、終戦直後
の不当解雇が横行していた頃に成立したもので、解雇規制が
厳しい割に、他の法規違反には比較的柔軟な対応をしている。
解雇には厳しく向き合う一方で、サービス残業などについては
ほぼ黙認状態であったわけだ。
したがって、法規制としては存在してはいるものの有名無実化
しており、それが既成事実となってしまっていることが
そもそもの問題なのだ。
そのせいもあろうか、
「労基法を完璧に守ってたらビジネスなんてできない」
と堂々と言い放つ経営者も多く存在している。
<日本をどのような国にしたいか、
というレベルの判断が求められる>
ではどうしたらいいのか。大まかに判断は2種類に分かれるだろう。
おもに共産党が主張しているような「規制厳格化」路線か、
逆に規制を緩和する「雇用流動化」路線かだ。
前者は「サービス残業が発覚した場合、残業代を2倍にする」
とか「労基署職員を増やし、労基法違反は厳罰化する」
といったやり方だ。
しかし、既存法でも「残業は違法」と明確に定義されており、
その法さえロクに守られていないのに、更に厳しくしたとしても
違法企業とのいたちごっこが続くだけではなかろうか。
私個人の意見としては、後者の「流動化」こそより現実的だと
考えている。流動化には「解雇規制緩和」の議論がつきもの
なので、必ず感情的な反発とセットになってしまうのだが、
一度真剣に向き合った方がよい。
そもそもなぜブラック企業の社員は、厳しい労働環境なのに
辞めないのか?
多くは、「辞めたくても辞められない」からだ。
なぜなら「失業時の保障が手薄」であり、かつ
「正社員の採用基準が厳しく、再就職しにくい」からだ。
雇用保険料の料率は健保や年金に比べてケタ違いに低く、
失業リスクが高い。かつ正社員は法規制によってクビに
しづらいから、採用側は「絶対に間違いない人を選びたい」
と考え、採用基準は必然的に厳しくなる。
ということは逆に、雇用保障を企業側の責任に押し付けるの
ではなく、国が引き受けてセーフティネットを整備し、同時に
解雇規制を緩和すれば「お試し」的に採用ができるようになり、
新たな雇用が生まれる可能性が高くなろう。
(企業側も、「転職回数で人材価値を判断する」といった
基準からのパラダイム転換が求められるが)。
このような形で人材の流動化が進めば、ブラック企業からは
躊躇なくどんどん人材が流出し、中長期的には淘汰されて
いくはずだ。
労基法制定時から産業構造も社会情勢も変化した今、
労使双方にメリットがある労働市場の流動化策を促進すべく、
抜本的に現在の枠組みを見直すタイミングが来たと考えて
いいだろう。
あったことは、皆さん報道でご存知の通りだろう。
本年9月に全国5,111事業所に調査が入り、その8割、
4,189事業所で労基法違反があったことが判明した。
本件について、昨日と今日はメディア各社さんから取材攻勢
を受け、各番組&各誌でコメントさせて頂いた。
ただ尺的にすべて報道されることはないであろうから、
以下に要点を表明しておきたい。
<この数字は、これまでの労働行政の必然的結果である>
もちろん、違法状態を看過している企業に問題があるわけだが、
「この程度の違法は当たり前」という雰囲気を創ってしまった
のは他ならぬ労働行政であり、司法判例である。
これまでも繰り返し述べてきたが、現在の労働法規は、終戦直後
の不当解雇が横行していた頃に成立したもので、解雇規制が
厳しい割に、他の法規違反には比較的柔軟な対応をしている。
解雇には厳しく向き合う一方で、サービス残業などについては
ほぼ黙認状態であったわけだ。
したがって、法規制としては存在してはいるものの有名無実化
しており、それが既成事実となってしまっていることが
そもそもの問題なのだ。
そのせいもあろうか、
「労基法を完璧に守ってたらビジネスなんてできない」
と堂々と言い放つ経営者も多く存在している。
<日本をどのような国にしたいか、
というレベルの判断が求められる>
ではどうしたらいいのか。大まかに判断は2種類に分かれるだろう。
おもに共産党が主張しているような「規制厳格化」路線か、
逆に規制を緩和する「雇用流動化」路線かだ。
前者は「サービス残業が発覚した場合、残業代を2倍にする」
とか「労基署職員を増やし、労基法違反は厳罰化する」
といったやり方だ。
しかし、既存法でも「残業は違法」と明確に定義されており、
その法さえロクに守られていないのに、更に厳しくしたとしても
違法企業とのいたちごっこが続くだけではなかろうか。
私個人の意見としては、後者の「流動化」こそより現実的だと
考えている。流動化には「解雇規制緩和」の議論がつきもの
なので、必ず感情的な反発とセットになってしまうのだが、
一度真剣に向き合った方がよい。
そもそもなぜブラック企業の社員は、厳しい労働環境なのに
辞めないのか?
多くは、「辞めたくても辞められない」からだ。
なぜなら「失業時の保障が手薄」であり、かつ
「正社員の採用基準が厳しく、再就職しにくい」からだ。
雇用保険料の料率は健保や年金に比べてケタ違いに低く、
失業リスクが高い。かつ正社員は法規制によってクビに
しづらいから、採用側は「絶対に間違いない人を選びたい」
と考え、採用基準は必然的に厳しくなる。
ということは逆に、雇用保障を企業側の責任に押し付けるの
ではなく、国が引き受けてセーフティネットを整備し、同時に
解雇規制を緩和すれば「お試し」的に採用ができるようになり、
新たな雇用が生まれる可能性が高くなろう。
(企業側も、「転職回数で人材価値を判断する」といった
基準からのパラダイム転換が求められるが)。
このような形で人材の流動化が進めば、ブラック企業からは
躊躇なくどんどん人材が流出し、中長期的には淘汰されて
いくはずだ。
労基法制定時から産業構造も社会情勢も変化した今、
労使双方にメリットがある労働市場の流動化策を促進すべく、
抜本的に現在の枠組みを見直すタイミングが来たと考えて
いいだろう。
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就活シーズン本格化、解くべき3つの誤解と、今年の特徴〜学歴選別、競争率の実態は?(1)
大手企業による、2015年3月に卒業する大学生の
採用活動が、明日12月1日に解禁される。
各企業は自社ホームページや「リクナビ」「マイナビ」といった
求人サイト上で学生の登録を受け付け、会社説明会を開催する
などの採用活動を本格化させていく。
さてこの「12月1日の解禁」、メディアでも「就活解禁」などと
報じられているためカン違いしている就活生が多いのだが、
これはどうもミスリードな感がある。
あくまで「経団連に所属し、倫理憲章を守る企業」が
「新卒採用活動」を行うことが解禁になるだけあり、
就活が一斉にスタートするという意味ではない。
事実、経団連に参加していない外資系企業やベンチャー企業は
この憲章を守る必要はないため、すでに選考を開始していたり、
応募を締め切ったりしている企業もある。
したがって就活生は「12月から解禁だから」とのんびり構えて
いると、貴重なタイミングを逃してしまいかねないのだ。
今回は、あたかも正しい情報かのように流布している
「ミスリードの情報」から、就活生がカン違いしてしまいやすい
ものを挙げ、誤解を解いていくかたちで
「今年の就活は例年とどのように違うのか」
を明らかにしていきたい。
ぜひ就活生の皆さんには、まやかしに打ち勝つ「情強」
であってほしいものだ。
【就活に関する誤解】
(1)12月から就活解禁だから、
今からスタートダッシュすれば充分だ
(2)求人倍率は改善傾向だから、
内定を得るのは以前よりラクになっている
(3)学歴フィルターの対象が拡大傾向だから、
高学歴でなくても大丈夫
誤解(1)12月から就活解禁だから、
今からスタートダッシュすれば充分だ
どうも、今年の就活生は全体的に「のんびり」しているように
感じる。上位校もFランク大学も、首都圏も地方もまったく同じ。
この感覚については筆者のみならず、各大学のキャリアセンター
の皆さんも同じ意見である。
実際、筆者が11月中旬に早稲田大学の就活講座で登壇した際、
「すでに自己分析を進めている人は?」と質問したところ、
挙手したのは100名中1桁程度であった。
「ではいつやる予定なのか?」と問うたところ、
「書類提出のタイミングでやればいいか、と
なんとなく考えてました」などという。
もちろん、人によって適切なタイミングがあるため一概には
いえないのだが、大多数の就活生にとってこの「のんびり
ムード」は危険だ。
なぜならこれからの約半年間は、就活において「やるべきこと」
が山積みである割に、「かけられる時間」はそれほど多くは
ないからだ。
しかも、2年前からの「採用活動時期繰り下げ」に伴い、
スタート時期は10→12月へと後ろ倒しになっているにも
関わらず、大手企業の内々定(実質的な内定)が出る
タイミングは4~5月のまま変わらない。
やるべきことは後倒しにせず、早急にとりかかる必要がある。
(つづく)
【ビジネスジャーナル】
「就活シーズン本格化、解くべき3つの誤解と、今年の特徴
~学歴選別、競争率の実態は?」
http://biz-journal.jp/2013/11/post_3484.html
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「餃子の王将」大東社長の逝去にあたり、心より追悼の意を表させて頂く
「餃子の王将」大東社長の逝去にあたり、
心より追悼の意を表させて頂く。
同社を巡っては、過去にTV番組でスパルタ式の新人研修が
扱われたことなどから「ブラック企業」との評判がある。
しかし、当該番組には編集が加わっていた。
スピーチで絶叫し、常務と抱き合って涙を流すといった
「TV的にインパクトのある部分」だけが放送されたため、
視聴者の拒否反応も強かったのである。
実際同社では、番組放送の10年前から同様の研修を継続
しており、特に何ら問題はなかったわけだから、部外者から
とやかく言われるいわれはなかったのかもしれない。
その後、同社HPではこの研修についての釈明文が掲載された。
要素としては次の通りだ。
****************************
「餃子の王将」では、メニューの工夫や、イベント企画を
行うなど、社員一人一人が存分に力を発揮し、併せて
仲間とも協力することが必要とされる。
その前に、あいさつや礼儀を社会人として身につけ
なければならない。
現代の若者は、家庭や学校でこうしたしつけをされることが
少なく、叱られたことのない人も多い。
そのため、通り一遍の無難な研修だけでは、学生気分から
脱却させることはできない。
****************************
同社の場合、1店舗の年間売上は平均で1億円を超えるから、
店長業務はちょっとした中小企業を経営するのと同じ
ようなものだ。当然ハードで、プレッシャーもあるだろう。
腹をくくって勤めて数年で自立するのか、さもなくば
「早めに辞めたほうがお互いのため」と認識させるためにも、
同社にとってスパルタ研修は必要だったのかもしれない。
いつも安くて美味しい料理をありがとうございました。
これからもお世話になります。
— 餃子の王将 渋谷ハチ公口店にて
↧
年末のご挨拶
当社の年末休暇は26日夕方から29日までで終了し、30日から
通常営業中である。 どうだ!超絶ブラック企業だろう!!
本年の新語流行語大賞トップテンに入るくらい注目された
「ブラック企業」。
私も、個別ブラック企業の悪事を暴く一方で、各地の行政・
自治体・企業さん、商工会議所さん、そして労働組合さん
などから
「ブラック企業からの被害に巻き込まれないために」
とか、
「自社をブラック企業にしないための心得」
といったテーマで講演、研修依頼を多々頂き、関心の高さを
実感した1年であった。
しかし、まだまだブラック企業問題は
誤解が多くまかり通っている。
労働時間が長ければ即ブラックなのか?
離職率が高ければ、低賃金なら、イコールブラックなのか?
そうではあるまい。
何度も言うが、ブラック企業という言葉の存在自体が
ブラック企業問題の解決を遠ざけている。
存在しているのは「ブラック企業」ではなく、
「残業代未払い企業」であり、
「不当解雇企業」であり、
「採用広告虚偽記載企業」なのだ。
このように個別具体的な問題を採り上げ、解決のために論じて
いかねばならない。
一方で、私のようにブラック企業勤務を愉しんでいた人間もいる。
そんなこと想像もつかない人にとっては、「学園祭」をイメージ
して頂くとよかろう。
たとえ準備が徹夜になろうとも、皆で一体となって取り組んだ
昂揚感、当日盛況だったときの達成感、無事終了して打上げ
をするときの盛り上がり…など、辛さよりも愉しみを感じること
のほうが多かったはずだ。
世間がブラック企業と揶揄しようとも、自らの価値観に
合致した組織での勤務は、毎日が学園祭みたいなものだ。
そこには決して「やらされ感」は存在しない。
全員が同じ目標に向けて力を尽くし、段階的に目標が達成でき、
やりがいを感じられることになる。
結局は自身の価値観、そして何にモチベートされるかの
違いだけだ。
これからも引き続き、悪徳ブラック企業を血祭りにあげつつ、
ブラック企業問題を本質から論じ、
働き甲斐を感じられる社会、
地道に働く人が報われる社会
を実現すべく奔走していくのだ。
↧
今年の抱負は「初心に返る」だ
流行語にノミネートされたお笑い芸人はすぐ消える、
というジンクスがある。
昨年ノミネートされた「ブラック企業」自体は世の中から撲滅
したいが、私自身が消えてしまっては困る。
ということで、今年の抱負は「初心に返る」だ。
昨年はお陰様で、メディアで発言させて頂く機会を多く頂けた。
しかし同時に、その一部の発言が切り取られて独り歩きし、
誤解されることも多かった。
私は単にブラックとされる企業を叩いて喜んでいる
のではない。
「就職における不幸なミスマッチ」を撲滅するために、
「ブラック企業」という切り口から「働くとは、仕事とは」
について語っているのだ。
世間から「ブラック」と呼ばれる会社なのに、ハッピーに
働いている人がいる。
一方で、世間から「大手」「優良」「人気」「難関」「一流」と
呼ばれる会社にいるのに、辛そうにしてる人がいる。
私自身、これまで延べ2万人以上の方々と面談する中で、
両方のパターンを目の当たりにしてきた。
同じ会社で同じ仕事をしていても、ある人は「最高に楽しい!」
といい、ある人は「こんなブラック企業、もう辞めてやる!」と言う。
それを「いい」とか「よくない」と感じる、自分自身の「価値観」
次第なのである。
ぜひ、私のメッセージを受け取って頂いた多くの人に、
「自分にとって『いい会社』とは何か?」
「自分にとっての『いい仕事』とは何か?」
と考えて頂きたい。
私は「ブラック企業」というキーワードから、そのキッカケを
提供したいと考えている。
今年は初心に返り、より多くのメッセージを発信していく。
また、労働問題について、就職・転職とキャリアについて、
「職場をブラック化させないための」コミュニケーションに
ついて…など、いろんな方とコラボして価値を創出して
いきたい。
ご一緒してくださるという奇特な方は、個別にメッセージを
頂戴できれば幸いだ。
本年も宜しくお願い申し上げます。
(写真は、主催するキャリアゼミの幹事学生の皆さんと、
顧問を務める「赤坂キャリア塾」の皆さんとともに)
↧
厚生労働省労働基準局監督課に訪問
明日(16日)午後、厚生労働省労働基準局監督課に赴き、
同省のブラック企業対策に関して意見交換をしてくる。
もし本テーマに関心をお持ちの方がおられて、何かしら
ご意見やご質問があれば、メッセージかコメントでお寄せ
頂ければ幸いだ。私が責任を持って、代理で確認してくるので。
日本の労働法と労働行政に関して、私の基本的なスタンスは
「解雇規制は緩和」かつ「労働法制は遵守」の方向である。
異論反論あろうが、ポイントは以下の通りだ。
(1)日本の労働法は、法制としては整っているものの、
実際のところそれが遵守されていないところが問題だ。
この構図は「スピード違反」と似ている。
違反は悪だが、実際は至る所でおこなわれており、
摘発された者は「みんなやってるじゃないか!他のヤツらも
取り締まれよ!」と逆ギレしたりするのだ。
ここは「労働法制遵守」が望ましい。
「労基法なんて守ってたら会社潰れるよ!」などとぬかす
無能な経営者に、会社を経営する資格はない。
価値あるアイデアを出せず、労働力を搾取する形でしか
生き残れない会社はサッサと潰れればよい。
(2)「解雇規制緩和」において、セーフティネット整備は必須だ。
「ブラック企業なのに辞められない…」という理由の一つは、
「辞めても失業保障が手薄で、再就職が難しい」からだ。
ということは逆に、雇用保障を企業に押し付けるのではなく
国が引き受けてセーフティネットを整備し、同時に解雇規制
を緩和すれば「お試し」的に採用ができるようになり、
新たな雇用が生まれる可能性が高くなろう。
このような形で「辞めやすい」環境になれば、搾取型
ブラック企業からは躊躇なくどんどん人材が流出し、
中長期的には淘汰されていくはずだ。
(3)とはいえ、必ずしも全面的にバラ色の将来がある
わけではない。
解雇規制のお蔭で会社にしがみついて辛うじて生きている
赤字社員が多数放擲されて、失業率が上がるかもしれないし、
労働コストを社会全体で負担する結果、安価で24時間365日
営業の飲食流通サービスの恩恵には与れなくなるかもしれない。
それらも含めてどう考えてどう行動するか、
我々の意思が問われるところだ。
(ご意見・ご質問をお寄せ頂ける場合、
明日16日(木)正午まで承る)
↧
↧
小平市「就活生・若手社会人のための働く力養成講座」に出講
16歳~35歳くらいまでの、東京都小平市内在住、在勤、
在学者に告ぐ。
あなた方は、今月末からスタートする
「就活生・若手社会人のための働く力養成講座」
の存在を知っているか?
中央公民館主催で、毎週水曜夜に開講する無料講座だが、
無料では本来ありえない、豪華講師陣なのである。
「前に進むための決める力を身につけよう」というテーマで
思考力、判断力についてレクチャーするのは三谷宏治氏
(K.I.T.虎ノ門大学院 主任教授、元アクセンチュア戦略
グループエグゼクティブパートナー)。
働くことと成功について語るのは元オリエンタルランド社員、
コミュニケーションと文章力について語るのは新聞社編集長。
そして「厳しい社会を生き抜くために」というテーマで現在の
労働環境を語るのはもちろん、ブラック企業アナリストの私だ。
貴重な機会である。ぜひ一人でも多くの方にお運び頂きたい。
市のホームページ上では既に応募受付期間は過ぎているが、
「新田の紹介で」とお伝え頂ければ参加できるようにして頂いた。
ピンときたら今すぐ電話かメールを。
市のホームページ上では既に応募受付期間は過ぎているが、
「新田の紹介で」とお伝え頂ければ参加できるようにして頂いた。
ピンときたら今すぐ電話かメールを。
講座初回は1月29日(水)19時半より。
では小平市中央公民館でお逢いしよう。
↧
ブラック企業問題、ズバリ厚労省に聞く(上) 「ブラック企業」という言葉が問題解決を遅らせている
昨年(2013年)は、厚生労働省が重点的に監督指導を強化した
ことや、参議院選挙において論点の一つになったことなどから、
これまでネットスラングだった「ブラック企業」が急激な速度で
広く認知されるようになった。
先日などは子供向けの特撮ヒーロー番組で、敵方の幹部が
自分たちの組織を「ウチはブラック企業だから…」と自嘲して
いるのを見聞きするに至り、ここまで浸透しているのかと
複雑な思いを抱いた次第だ。
昨今、多くの論者が「ブラック企業」について自説を展開しており、
併せて労働問題への関心は着実に広く高まっているのは
喜ばしいことだ。
しかし一方で、各論者にとって「ブラック企業」の定義が
さまざまであるため、論者間にしても論者-読者間にしても、
論点がかみ合わない展開になることが多い。
ある人は「労働基準法違反は問答無用で悪だ!」といい、
「いや、そんなことを言ったら日本のほぼすべての会社が
ブラックになってしまう」といった反論があるかと思えば、
「ブラックな環境でも、社員が鍛えられて成長できるなら
いいではないか」…など個々人の情緒も絡み合い、
「Aとも言えるがBとも言える」的な話になってしまう。
結果的に情報の受け手にとって「なんだかよく分からない…」
という印象になってしまっているのがもったいない。
「ブラック企業」という言葉は、「悪いことをしてる会社」
というイメージが伝えられる点で便利だが、一方で
「本当の問題の所在があいまいになる言葉」でもある。
これは「若者の使い捨て」とか「やりがい搾取」みたいな
「もっともらしいけど、具体的にはよくわからない言葉」も
同様だ。
問題は、個別の違法行為にある。「36協定違反」とか
「残業代不払い」、「不当解雇」、「賃金未払い」、そして
「採用広告虚偽記載」…といった形で具体的に採り上げ、
解決のために対処していかねばならないのだ。
「ブラック企業」という言葉を今のように使っている限り、
ブラック企業問題は解決しない。
単に「ブラック」と認識されている企業を批判し、溜飲を
下げているだけのことが多いからだ。
それでは単なる私刑(リンチ)である(「暴行」や「恐喝」を
「いじめ」と表現することで問題への対応が後手にまわる、
といった構図に近いかもしれない)。
定義や問題解決へのアプローチは様々あれど、
最終的にはブラックな労働環境は撲滅させ、皆が働き
やすい国にしたいというゴールは同じであるはずだ。
であるならば、識者同士で定義を議論し合うことに不毛な
エネルギーを割くより、監督官庁と協働しながら、何かしら
具体的なアクションを起こしていくほうが建設的だろう。
表層的な批判が広がりすぎるのは、大多数の人にとって
得にならない。単に「ブラック企業というキーワードに
過敏な拒否反応を示す人」を増やしてしまうだけで、
全体として問題解決につながらないからだ。
ここはぜひ
「なぜ、そんな違法野放し状態が生まれてしまうのか?」
「なぜ法律で取り締まれないのか?」
といった素朴な疑問を持ち、真の問題解決に繋がる行動
をとっていきたいところである。
ことや、参議院選挙において論点の一つになったことなどから、
これまでネットスラングだった「ブラック企業」が急激な速度で
広く認知されるようになった。
先日などは子供向けの特撮ヒーロー番組で、敵方の幹部が
自分たちの組織を「ウチはブラック企業だから…」と自嘲して
いるのを見聞きするに至り、ここまで浸透しているのかと
複雑な思いを抱いた次第だ。
昨今、多くの論者が「ブラック企業」について自説を展開しており、
併せて労働問題への関心は着実に広く高まっているのは
喜ばしいことだ。
しかし一方で、各論者にとって「ブラック企業」の定義が
さまざまであるため、論者間にしても論者-読者間にしても、
論点がかみ合わない展開になることが多い。
ある人は「労働基準法違反は問答無用で悪だ!」といい、
「いや、そんなことを言ったら日本のほぼすべての会社が
ブラックになってしまう」といった反論があるかと思えば、
「ブラックな環境でも、社員が鍛えられて成長できるなら
いいではないか」…など個々人の情緒も絡み合い、
「Aとも言えるがBとも言える」的な話になってしまう。
結果的に情報の受け手にとって「なんだかよく分からない…」
という印象になってしまっているのがもったいない。
「ブラック企業」という言葉は、「悪いことをしてる会社」
というイメージが伝えられる点で便利だが、一方で
「本当の問題の所在があいまいになる言葉」でもある。
これは「若者の使い捨て」とか「やりがい搾取」みたいな
「もっともらしいけど、具体的にはよくわからない言葉」も
同様だ。
問題は、個別の違法行為にある。「36協定違反」とか
「残業代不払い」、「不当解雇」、「賃金未払い」、そして
「採用広告虚偽記載」…といった形で具体的に採り上げ、
解決のために対処していかねばならないのだ。
「ブラック企業」という言葉を今のように使っている限り、
ブラック企業問題は解決しない。
単に「ブラック」と認識されている企業を批判し、溜飲を
下げているだけのことが多いからだ。
それでは単なる私刑(リンチ)である(「暴行」や「恐喝」を
「いじめ」と表現することで問題への対応が後手にまわる、
といった構図に近いかもしれない)。
定義や問題解決へのアプローチは様々あれど、
最終的にはブラックな労働環境は撲滅させ、皆が働き
やすい国にしたいというゴールは同じであるはずだ。
であるならば、識者同士で定義を議論し合うことに不毛な
エネルギーを割くより、監督官庁と協働しながら、何かしら
具体的なアクションを起こしていくほうが建設的だろう。
表層的な批判が広がりすぎるのは、大多数の人にとって
得にならない。単に「ブラック企業というキーワードに
過敏な拒否反応を示す人」を増やしてしまうだけで、
全体として問題解決につながらないからだ。
ここはぜひ
「なぜ、そんな違法野放し状態が生まれてしまうのか?」
「なぜ法律で取り締まれないのか?」
といった素朴な疑問を持ち、真の問題解決に繋がる行動
をとっていきたいところである。
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ブラック企業問題、ズバリ厚労省に聞く(中) 「労基法の遵守」はどうなっているの?
これまでのブラック企業にまつわる議論を眺める限り、
「なぜ政府は/国は/労基署は○○しないんだ!」
と批判する意見は多いが、実際に彼らの見解を一次情報として
ヒアリングし、それを土台にして議論しているものはほとんど
見当たらない。ということで、私自身がその役割を果たし、
素朴な疑問を聴きに行くことにした。
2014年1月中旬のある日、私は厚生労働省の労働基準局
監督課を訪問し、インタビューおよび意見交換をしてきた。
対応してくださったのは、同課監督係長 髙橋仁氏、
同課中央労働基準監察監督官 梶原慎志氏、そして
同局労働条件政策課課長補佐 角園太一氏である。
各氏にはご多忙の中、長時間を割いて頂き、素朴な質問
に対して丁寧に回答頂けたことに感謝申し上げる。
(質問1)今回、ブラック企業対策が推進された経緯は?
<回答>この問題が国会で採り上げられたのは、2013年の
通常国会以降である。その後、各政党においても取り上げられ、
政府としても6月に「日本再興戦略」が閣議決定され、その中の
「若者の活躍推進」という観点から取り組むことになった。
これがターニングポイントである。
具体的には、過重労働や賃金不払残業など若者の「使い捨て」
が疑われる企業について、相談体制、情報発信、監督指導等の
対応策を強化するというものだ。
田村憲久・厚生労働大臣は、8月8日に若者の「使い捨て」が
疑われる企業への取組を発表した際、「若者が使い捨てに
されているという問題を野放しにしては、再興戦略どころか、
日本の将来は無い。いわゆるブラック企業と言われている
ような、若者を使い捨てしている企業を無くしていきたい」
と語っている。
それを受けて、9月を「過重労働重点監督月間 」として、
労働基準監督署及びハローワーク利用者等からの苦情や
通報等を基に、離職率が極端に高いなど、若者の「使い捨て」
が疑われる企業等に対し、重点的な監督指導を実施すること
になった。
(質問2)厚労省としては、「ブラック企業」の定義を何かしら
定めているのか?
<回答>「ブラック企業」と言われる企業の実態は様々であり、
省としては定義し難い。 定義を明確にしてしまうと、
「その定義から外れるなら、ブラック企業ではない」という
主張を悪質な企業に許したり、逆に、意図せずに企業に
レッテルを貼ることになったりしてしまう。
「過重労働」とか「パワハラによって従業員を使い潰す」など、
例として挙げることはできるのだが。
確かに定義があいまいであり、識者によってかなり広範に
使われ、その捉え方は様々であるので、言葉の扱いには
悩んでいるところだ。
(質問3)ブラック企業にまつわるさまざまな労働問題を
みていると、「労基法など法制は整っているのに、
肝心の遵守が徹底していない」と感じている。
これは何が問題なのだろうか?
<回答>「労基法を遵守すべきという意識が浸透し切って
いない」、という現状については省としても認識している。
労働基準行政の展開として、昭和22(1947)年に労基法が
できてから、最優先事項は「死亡災害などの労働災害を
なくすこと」であり、長年その撲滅に力を入れてきた。
昨今、ようやくそういった労働災害が減ってきたので、
その分の業務量をこんどは一般的な労働環境へとシフト
してきたところである。また、毎年多数の新規起業が
行われているといった要因もあり、いずれにせよ、
まだまだ充分浸透していないという認識である。
また、全ての労働問題を、労働基準監督署で対処できる
わけではない。 労基法等の労働基準関係法令については、
監督署が監督指導に入り、違法行為を取り締まることができる。
しかしパワハラ等についての問題は、最近問題として取り
上げられ、ようやく定義の議論が始まった概念であり、
法令等においても定義及び取締権限について規定されていない。
そのため、監督官としても取締ができないのだ。
(以下、インタビュー「下」に続く)
(※注) 労基署はあくまで労基法違反の取締機関であり、
労働者のお悩み相談所としての役割・権限は与えられていない。
詳しくは本ブログの過去記事
「労働基準監督署にうまく動いてもらうための3つのポイント」
を参照のこと。
↧
ブラック企業問題、ズバリ厚労省に聞く(下) 少ない監督官で指導徹底はどこまで可能?
(質問4)では、その前提のうえで、労働基準局としては
どのように対処していこうとしているのか?
<回答>相談体制等を強化せねばならないというスタンスで、
実際に予算を確保して推進している。
まず、現在でも相談体制があることを周知徹底していく。
各地の労基署などに設置している「総合労働相談コーナー」や、
各地の新卒応援ハローワークでも相談体制を強化していく。
それに加えて、電話相談の強化だ。来年度(2014年度)予算
において、委託事業で「労働条件相談ダイヤル(仮称)」という
フリーダイヤルを設け、夜間休日も相談を受け付ける体制を
整えることを検討している。
あとは、社会に出るまで労働法を学ぶ機会は現状少ないが、
経営者も労働者も、労働法に関して意識と知識を持ってもらう
ようにしたいと考えている。現在でも各地の大学等に働きかけ、
労働局の職員が無料で出張しておこなう講義などを進めているが、
それに加えて、労働関連法規の周知徹底のためにポータル
サイトを設置したり、労働法のセミナーなどを全国的に実施
したりすることなどで周知徹底する。
(※注) 「総合労働相談コーナー」とは、労働問題に関する
相談、情報提供にワンストップで対応する窓口である。
労働条件、いじめ・嫌がらせ、募集・採用など、労働問題に
関するあらゆる分野についての労働者、事業主からの相談を、
専門の相談員が面談あるいは電話で対応してくれる。
さらに希望する場合は、裁判所、地方公共団体等、他の紛争
解決機関の情報提供もしてくれる便利な存在なのだ。
(質問5)違法行為の取締についてはぜひ強化して頂きたいが、
一方で現在、労基署に持ち込まれる相談案件の数が
多すぎ、捌ききれていないのではと考えている。
また労働者数あたりの労働基準監督官の数も、
他国と比して相対的に少ない。その状況下で、
どのように指導を徹底させていくのか?
<回答>ぜひ監督署としても指導強化していきたいが、人数の
割に相談数が多く、どうしても優先順位はつけざるを得ない。
より重大なもの、より証拠がしっかり揃っているものを優先する
ことになる。あとは先着順だ。
監督官が日本に存在する全ての事業所を訪問するとなると、
現在の監督官の人数では何十年もかかってしまう。人員増要求
は以前からおこなっているが、厳しい行財政状況もあり、
なかなか難しい状況だ。
そのような状況下においては、いただく情報の「精度を高めて
いく」取組も重要だ。 たとえば「解雇」問題については、
個々人の感じ方とか価値観が関わってくるので扱いが難しい
場合もあるが、「賃金未払い」や「残業代不払い」などは、
事実関係の明確な証拠があれば対処しやすい。
今回の「過重労働重点監督月間」でもだいぶ具体的な情報が
集まった。 今後は窓口相談や電話相談、メール対応以外に、
先ほど話した委託事業での時間外対応などを検討しており、
労基署としてもより多くの確度が高い情報を得られる仕組みを
設けて対処していきたい。
(質問6)違法行為に対して、監督官が職場に立ち入って
是正指導したとしても、中にはほとぼりが冷めたか
のように、再度違法状態に戻ってしまう場合がある。
そのような状況にはどう対処するのか?
<回答>監督官が指導する際は、「是正が定着してほしい」
という思いで、違法状態が再発しないだろうという確認をとった
うえで是正完了としている。
実際にILO(国際労働機関)においても、必罰というより
「まずは改善させる」という手法を推奨している。
しかし、もし違法行為が繰り返される場合は、司法手続を
おこなう形で対処する。たとえば「賃金未払い」は刑法犯に
該当し、送検され、刑事処罰される可能性があるということを
もっと知っていただきたいと考えている。
送検の事実は公表されるので、それが当該企業にとって
社会的制裁になるという面もあるだろう。
(質問7)労働法制が語られる中で関連して話題になるのが
「解雇規制をどうするか」というテーマである。
この見直しについてはどう議論されているのか?
<回答>解雇について民法では、「無期雇用契約の場合、
お互いいつ辞めてもいい」、つまり、退職も解雇も自由と
なっている。
しかし、これまで解雇にまつわる個別の紛争で裁判が数多
おこなわれてきて、その判例に基づいた原則が今の労働契約法
による解雇の規定となっている。
紛争や雇用管理の実態を踏まえ、歴史の積み重ねとして
裁判所が築き上げたルールを、行政側で恣意的に変える
わけにはいかないと考えている。
ちなみに、「日本は世界的にみて解雇規制が厳しい」と
言われるが、OECD諸国で比べた場合、日本は解雇規制が
弱い方から10番目。アメリカより厳しく、欧州より弱い、という
位置づけだ。 またこれまでのデータを見る限り、
「解雇の難易度」と「失業率」との相関関係はあまりない。
他にも「景気の良し悪し」などの要因も大きく、解雇の難しさ
とはあまり関係ないと認識している。
また、「解雇しにくいことが対日投資を阻害している」という
意見もあるが、海外からの投資という観点からは、「法人税率」
といった要因もあると考えている。
一方で、裁判でどのような判断が下されるか予見しがたい
という意見もあることから、「雇用条件の明確化」に取り組む
こととしている。
なお、そもそもなぜ整理解雇を厳しくしているかというと、
「昇進・昇給」や「退職金」といった将来への期待を持たせる
形で採用して働かせていたのに、その期待を裏切ることに
なるという、マネジメントとの関係がある。解雇のルールは
マネジメント、働かせ方・働き方と一体マネジメントの仕組み
が変わらない中では、解雇の判断だけ変わるということは
ないのではないか。
労働時間や働き方に関する議論は省内でも本格化しており、
「企画業務型裁量労働制の在り方」や「いわゆる正社員と
非正規雇用との間になるような多様な正社員をどう普及
するか」など労使や有識者を交えて話し合われている。
これだけ多様な人が働いている中では、雇用の問題についても
いろんな意見が出てくることは、むしろおかしい話ではない。
そのような意見がある中で、労使の意見をしっかり聴きながら、
バランスの取れたものが出来るよう進めていきたい。
(質問8)セーフティネットが充分でないから、簡単に会社を
辞められない。そういった人がブラック企業を支えて
いる、という議論があるが、どう捉えているか?
<回答>個人的な意見ではあるが、高度成長期までは
「雇用を企業が丸抱えしていて、労働組合がちゃんと経営を
監視する」ところがあり、企業が負担していた雇用と保障に
ついて行政が支援していた。
現在、経営環境が厳しくなって、企業側における福利厚生や
雇用が厳しくなっており、ドライな世界に突入しているとも言える。
失業者への社会保障については管轄外なので個人的な意見
になるが、求職者支援制度など、支援体制については柔軟で
手厚くなってきていると考えている。
数年前までは、雇用保険と生活保護しかなかった。保障水準
については、本人がそれまで働いた期間に合わせた形で
おこなうが、再就職を支えるものであり、次に働いてもらうための
モチベーションにもならなくてはならないから、手厚すぎては
いけないという面もある。
(質問9)最後に、読者へのメッセージを
<回答>我々労働基準監督署でできることについては
一生懸命やっている。何かあればぜひ気軽に相談し、
活用してほしい。
相談してもらうことで法律知識がある人が増えていくという
効果もある。また労基法を始めとして、関係法令を守って
もらうという立場からの指導も、今後とも徹底していきたい。
↧
↧
北九州市主催「人権を考える企業のつどい」で登壇
「人権を考える企業のつどい」は、北九州市教育委員会が毎年
実施している企業への人権啓発活動。今年のテーマは
「ブラック企業について考える」だ。私の出番である。
公的事業ゆえ、大っぴらに「ブラック企業」と連呼できない
のが残念だ。
ちなみに政治的に正しい言い回しは
「若者の使い捨てが疑われる企業等」
である。となると私の肩書も
「若者の使い捨てが疑われる企業等アナリスト」に… 長いな。
当日はブラック企業の実態について詳説するのはもちろん、
「企業の人材に対する責任」と、「従業員の社会・企業に対する
責任」について事例を挙げながら展開していく。
その上で経営者や管理職が果たすべき役割、一方で従業員が
持つべき心構えについて述べていく内容だ。
「ウチはあんまり給料も払えないし、ブラックだと
思われるよな~」
とお嘆きの中小零細規模企業の経営者の皆さん、そして
「こんなブラック企業辞めてやる!」
と息巻いておられる従業員の皆さんには何かしらのヒント、
行動指針を提供できるはずである。
無料であるし、会場のキャパシティも充分なので(500人規模の
会場がスカスカではこれからの私の仕事に差支えるしwww)、
お気軽にお運び頂きたい。
日時:2月14日(金)14時00分~16時00分
会場:北九州市立男女共同参画センター・ムーブ ホール
(北九州市小倉北区大手町11-4)
対象:企業の経営責任者、人事採用責任者・担当者等
↧
はじめての「同時手話通訳つき」講演終了
お陰様で、北九州市主催「人権を考える企業のつどい」講演は
盛況のうちに終了。
話すことを生業のひとつとしてから長いが、「同時手話通訳つき」
で講演するのは初めてだ。事前打ち合わせで通訳の方から
「ブラック企業っていうのは、どうやって訳したら
いいもんでしょうねえ」
と言われ、改めて定義のややこしさを実感した次第である。
ちなみに今回は、最初だけ
「違法状態を看過し、改善する気もない会社。公的には
『若者の使い捨てが疑われる企業等』と言われている」
と説明して頂き、2回目以降は「黒い会社」wで通して頂いた。
終了後は、先進的なキャリア教育で注目している北九州市立大学
を訪問し、取り組みを勉強させて頂いてから帰路に。
空港に向かう道中、ビジネスホテルまでバレンタインモードに
なっている状況を目にするが、私には縁のないイベントなので
気にしないこととする。ま、全部雪のせいだわ。
で、空港に着いてから帰路便の欠航を知る。
こちらに来てから雪を目にしていないので実感がないのだが、
東京はよほど厳しいのだろう。
致し方なく新幹線で行けるところまで移動し、京都にて一泊。
車内で仕事がこなせたから問題なし。
京都を満喫できないのが名残惜しいが、今日はこれから
静岡に移動して講演である。
↧
雪は、普段見落としがちなことに気づかせてくれる
都心での大雪といった非日常的な環境に身を置くと、
普段当たり前のようにやり過ごしている「大切なこと」
に気づかされる。
大雪の翌日、ぬかるんだ道を見れば、普段なんの障害もなく、
当たり前に歩けることを有難く感じる。
その翌日に雪かきが施された道を見れば、こういった
誰が褒めてくれるでもない、地域社会のための仕事を
黙々と担ってくれている人がいることに想いを馳せるのだ。
本日は山形、明日は秋田で講演だ。
現地入りの日は山形新幹線も運休になるレベルの豪雪
であったが(宿泊地に到着できたのは当初予定時間の
9時間後だった…)、特段ニュースにもならず、今日も
雪は粛々と処理され、列車やバスは定時運行に戻っている。
これが当地での日常であり、敬意を感じずにはいられない。
極限状況の中でも、仕事や役割を確実に果たそうと
してくれる人がいるのは大変有難いことだ。
同時に、普段の交通インフラがいかに定時性をもち、
ストレスを感じないレベルで運営されているかという
事実にも気づかされる。すべてに感謝の気持ちを抱く
のみである。
↧