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Channel: ドラゴンの抽斗 ブラック企業アナリスト新田龍が語る「はたらく」「しごと」「よのなか」
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10月30日(水)放送 NHK「おはよう日本」でのコメント全文

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10月30日(水)放送のNHK「おはよう日本」内のクローズアップ
特集で「大卒3年後の離職率が高い業界」がテーマとして
採り上げられることとなり、私も取材協力&コメントをさせて頂いた。

当日7時20分頃から放送予定なので、タイミングが合えば
ご覧頂きたい。

たぶん尺的に全てのコメントは流れないと思われるので、
長文恐縮だが以下に主張を詳説させて頂く。
(とはいえ最大公約数的な回答なので、ヌケモレがあれば
 ぜひ補足頂ければ幸いだ)

<なぜ、大卒3年後の離職率が高くなってしまうのか?>

飲食業を例にとると、大きな原因として業界の
「構造的側面」
「経営的側面」
「日本的メンタリティ面」
の3つが挙げられる。


「構造的側面」
【需要不足なのに供給過多】
飲食市場規模は縮小しているにも関わらず、関わる人の数と、
一部業態の店舗数は以前よりも増えている。

飲食市場規模のピークは1997年の約29兆円、店舗数は91年の
85万店がピークで、その後10年でそれぞれ20%近く減少している。
しかしその間も、居酒屋業態の店舗数は10%増加、労働者数は
386万人から440万人へと14%増加している。
小さい市場規模の業界に多くの社員がひしめいているわけだ。

【労働集約型で、人件費割合が大きい】
単純労働力の提供が収益の源泉となっており、機械化が難しく、
売上に占める労務費の割合が高いため、給与が圧縮対象に
なりやすい。


「経営的側面」
【高度なスキルは不要で、労働力確保が容易】
多くの仕事が単純作業で、高度な知識や経験は不要。
採用対象となる母集団は数多いため集まりやすく、仮に誰かが
辞めても「また雇えば問題ない」というイメージができ、経営側
にとって「誰でもできる」「代わりはいくらでもいる」という考えに
なりやすい。結果的に「人を育てる」意識が低くなり、低賃金で
こき使いやすくなる。

【経営陣の努力不足、アイデア不足】
経営者が安易に「値下げ」や「営業時間延長」に走ってしまうと、
しわ寄せが従業員に来ることになる。
「労基法なんか守ってたら利益は出せない」などと開き直り、
薄給で責任感をもって頑張ってくれる社員に甘えて、利益が
出るシステムを創ってこなかった責任は重い。

【採用時の情報提供が不充分】
応募者減を避けるため、採用時には「昇給する」「社風がいい」
などと耳に聞こえのいいことしか言わず、「ハードワーク」とか
「重いプレッシャー」といったネガティブな情報を故意に伝えない。
結果的に応募者の心構えが足りず、入社後ミスマッチを感じて
辞めてしまう
ことに。


「日本的メンタリティ面」
【労働に対する価値観】
「若いうちの苦労は買ってでもしろ」
「石の上にも三年」
「努力は報われる」
といった考えを都合よく利用し、理不尽な業務量を強要する。
責任感が強い社員ほど「自分が頑張らなければ…」と一人で
抱え込み、過労状態に。
また同じ薄給激務状態でも、チェーン店だと叩かれて、
高級料亭やミシュラン星付店だと「修行」の名の下に美談に
なるのもダブルスタンダード
。違法な労務管理はすべてNG。

【おもてなし文化への甘え】
ユーザーにとって「お客様は神様」という意識が根強く、会社も
客も、過剰な水準の接客サービスを従業員に強いる。
これまたしわ寄せは従業員に。


解決策としては、まずは違法状態を看過しないことが大前提だが、
まずは経営陣が

「未払い残業ゼロ&高待遇でも利益を出せる仕組み」

を創ることである。

同業界においても、不況下で売上を伸ばしている会社は確実に
存在しており、企画やマネジメントなど相応の努力をおこなって
いることが共通点だ。

また、「徹底的な情報開示」も必須である。

「当社はこれくらいの残業とプレッシャーがあるが、
 その分これだけのメリットを提供する」

という具合に、不都合な真実を赤裸々にオープンにするのだ。
応募者数は減るだろうが、その分覚悟を決めた人だけが参画
することになるだろう。

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