一方で、彼らの主な仕事である裁判の件数をみてみよう。
00年の新受件数(すべての裁判所で新たに受理された訴訟件数)
が553万7154件だったものが、13年には361万4242件と、なんと
200万件も減少している。仕事が減れば就職も厳しくなり、
それは当然収入にも跳ね返ってくることになる。
イソ弁、ノキ弁、タク弁、さらにはケー弁といった言葉をご存じ
だろうか。
司法試験合格後、弁護士事務所に就職できた新人はイソ弁
(居候弁護士)と呼ばれ、給料をもらいながらキャリアを積む
ことができる。昨今、このイソ弁の労働条件はどの事務所でも
悪化していると聞くが、まだ固定収入があるだけ恵まれている
ほうなのだ。
固定給はなく、ボスとなる弁護士(ボス弁)の事務所スペース
を借りて開業し、おこぼれ仕事にあずかる弁護士がノキ弁
(軒先弁護士)で、軒先を貸してくれる事務所すら見つからない
弁護士はやむを得ず自宅で開業することになり、タク弁
(自宅弁護士)と呼ばれる。
さらには、その事務所を借りるお金すらない弁護士は、携帯
電話だけで仕事をするケー弁(携帯弁護士)となるわけだ。
弁護士業界も格差社会なのである。
実際、弁護士の収入分布は広がりを見せており、平均値が
高いのは一部の超高額収入者の存在によって押し上げられて
いるからと見る向きがある。
国税庁の12年度の調査によると、年収100~150万円の弁護士
は585人、150~200万円が594人、200~250万円が651人、
250~300万円が708人、300~400万円が1619人という具合に、
サラリーマンの平均年収を下回る水準の弁護士も非常に多い
ことがわかる。
また、所得が1000万円以上だった弁護士は5年前から15%
減少。逆に200~600万円の人が20%ほど増加しているのだ。
収入は減り、支出は増える一方
弁護士は、なるまでにも、なった後にもお金がかかる。
まず、法科大学院の平均的な初年度学費は100~140万円。
しかし、そこでは司法試験の要である論文試験対策は行われない。
「予備校的だから」という理由で、法科大学院で教えることは
ご法度とされているためだ。
したがって、論文対策として別途予備校に通う人もいる。
大手法曹予備校の授業料もまた、年間100万円を超える
高額なものだ。
しかも、司法試験合格者が受ける司法修習の期間に支給
されていた毎月20万円の給与が11年以降はなくなり、
無給状態で1年間すごさなければならなくなった。
法科大学院卒業までの多額の授業料を借金や貸付奨学金
などでまかなっている人も多く、その費用返済と相まって、
司法修習生の7割が経済的な不安を抱えているという
調査結果もある。
また弁護士登録後は、所属する地方の弁護士会へ会費を
毎月支払わなければならない。金額は地域によって異なるが、
年額で50~100万円といわれており、いずれにしても高額である。
難関試験を突破するために多くの時間とお金を費やしたにも
かかわらず、仕事は減り収入は安定せず、逆に出費はかさむ
一方。そのような状態では、さらなる出費を要する営業活動に
いそしむこともできず、経験や人脈がないまま仕事を進めて
いかざるを得ない。必然的に、弁護士の質の低下という事象
になって現れることになる。
司法制度の改革は、国民生活の向上に資することを目的と
していたはずだが、それが実現できているかは疑問である。
年収百万円台…食えない弁護士急増
借金&高額費用かけ超難関試験合格も仕事なし
http://biz-journal.jp/2015/05/post_10077.html