今回の読売新聞記事の法的解釈については、法律の専門家
からも次のように疑問が投げかけられている。
「システム運営者と各店舗の関係は、委託関係(個人情報
保護法22条)として処理すれば、個人情報保護法違反には
ならない。したがって、『店舗間の顔認証情報共有』を『個人
情報保護法に違反するおそれがある』とする読売新聞の
記事は、間違いか、そうでなくても、問題の本質ではない
ことになる」
(『顔認証による万引防止システムと法の支配について』
<「花水木法律事務所のブログ」より>)
また筆者が取材した警察関係者も
「顔認証における顔データベースの共有は個人情報保護法
には抵触しない」
との考えを示した。
とはいえ、法的根拠についてはまだ整備されていない部分も
あるため、今後の議論が待たれるところであるが、ここで
問題にしたいのは、読売新聞が事実を裏取りせずに、
証拠もない情報を公の記事で断言しているという点である。
A社に確認したところ、同社とシステムをすでに導入している
店舗に消費者から苦情は来ていないという。
以上見てきた疑問について、本記事執筆者である畑記者に
直接確認すべく読売新聞社に問い合わせたところ、
「担当者不在」との返答であった。
万引きによる日本国内の小売業における被害総額は年間
4,500億円以上と試算されている。この金額に対して、小売業の
売上高対人件費比率を15%、従業員の平均年収を300万円と
仮定した場合、年間2万2575人分の雇用が喪失している計算
になるのだ。
まさに、犯罪によって、国民の働く機会が失われている
といえよう。
そんな中、今回読売新聞が批判しているようなシステムが
普及すれば、犯罪が未然に防げるようになるかもしれない。
当該記事が掲載された当日、畠山氏は畑記者に対して
抗議の電話をしたという。それに対して畑記者は開口一番、
こう答えたのである。
「どうです。いい宣伝になったでしょ?」
畑記者からA社に取材依頼があった際は、次のように
伝えられていたという。
「さまざまな顔認証の取材をしており、最前線のシステム
として取り上げたい」
「社名、製品名を出して掲載する予定」
「これから取材する別の顔認証システムも複数あるので、
その一つとして掲載する予定」
A社は、この取材趣旨をそのまま受け止め取材に応じた
結果、誤った事実と不確かな法的解釈に基づく批判記事
を書かれてしまったのだ。
これは見方を変えれば、社会的影響力を持つ大手新聞
による中小ベンチャー企業への営業妨害とも取れるし、
趣旨に賛同して契約を決めたユーザー店舗にも損失を
与えかねない行為といえよう。
本記事内ではA社の社名も製品名も掲載されていないことから、
畑記者の後ろめたさも感じられる。
読売新聞には、本記事掲載に至るまでの一連の経緯や
問題点の検証、およびその結果の公表が求められている。
読売新聞記事に捏造の疑い、取材対象者から
抗議受けた記者は「いい宣伝になったでしょ?」
http://biz-journal.jp/2014/04/post_4607.html