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Channel: ドラゴンの抽斗 ブラック企業アナリスト新田龍が語る「はたらく」「しごと」「よのなか」
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ブラック企業問題、ズバリ厚労省に聞く(中) 「労基法の遵守」はどうなっているの?

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これまでのブラック企業にまつわる議論を眺める限り、
「なぜ政府は/国は/労基署は○○しないんだ!」

と批判する意見は多いが、実際に彼らの見解を一次情報として
ヒアリングし、それを土台にして議論しているものはほとんど
見当たらない。ということで、私自身がその役割を果たし、
素朴な疑問を聴きに行くことにした。  

 2014年1月中旬のある日、私は厚生労働省の労働基準局
監督課を訪問し、インタビューおよび意見交換をしてきた。
対応してくださったのは、同課監督係長 髙橋仁氏、
同課中央労働基準監察監督官 梶原慎志氏、そして
同局労働条件政策課課長補佐 角園太一氏である。
各氏にはご多忙の中、長時間を割いて頂き、素朴な質問
に対して丁寧に回答頂けたことに感謝申し上げる。

(質問1)今回、ブラック企業対策が推進された経緯は?

<回答>この問題が国会で採り上げられたのは、2013年の
通常国会以降である。その後、各政党においても取り上げられ、
政府としても6月に「日本再興戦略」が閣議決定され、その中の
「若者の活躍推進」という観点から取り組むことになった。
これがターニングポイントである。  

 具体的には、過重労働や賃金不払残業など若者の「使い捨て」
が疑われる企業について、相談体制、情報発信、監督指導等の
対応策を強化するというものだ。  

 田村憲久・厚生労働大臣は、8月8日に若者の「使い捨て」が
疑われる企業への取組を発表した際、「若者が使い捨てに
されているという問題を野放しにしては、再興戦略どころか、
日本の将来は無い。いわゆるブラック企業と言われている
ような、若者を使い捨てしている企業を無くしていきたい」
と語っている。  

 それを受けて、9月を「過重労働重点監督月間 」として、
労働基準監督署及びハローワーク利用者等からの苦情や
通報等を基に、離職率が極端に高いなど、若者の「使い捨て」
が疑われる企業等に対し、重点的な監督指導を実施すること
になった。


(質問2)厚労省としては、「ブラック企業」の定義を何かしら
     定めているのか?

<回答>「ブラック企業」と言われる企業の実態は様々であり、
省としては定義し難い。   定義を明確にしてしまうと、
「その定義から外れるなら、ブラック企業ではない」という
主張を悪質な企業に許したり、逆に、意図せずに企業に
レッテルを貼ることになったりしてしまう。
「過重労働」とか「パワハラによって従業員を使い潰す」など、
例として挙げることはできるのだが。  

 確かに定義があいまいであり、識者によってかなり広範に
使われ、その捉え方は様々であるので、言葉の扱いには
悩んでいるところだ。


(質問3)ブラック企業にまつわるさまざまな労働問題を
     みていると、「労基法など法制は整っているのに、
     肝心の遵守が徹底していない」と感じている。
     これは何が問題なのだろうか?

<回答>「労基法を遵守すべきという意識が浸透し切って
いない」、という現状については省としても認識している。  

 労働基準行政の展開として、昭和22(1947)年に労基法が
できてから、最優先事項は「死亡災害などの労働災害を
なくすこと」であり、長年その撲滅に力を入れてきた。
昨今、ようやくそういった労働災害が減ってきたので、
その分の業務量をこんどは一般的な労働環境へとシフト
してきたところである。また、毎年多数の新規起業が
行われているといった要因もあり、いずれにせよ、
まだまだ充分浸透していないという認識である。  

 また、全ての労働問題を、労働基準監督署で対処できる
わけではない。
   労基法等の労働基準関係法令については、
監督署が監督指導に入り、違法行為を取り締まることができる。  
 しかしパワハラ等についての問題は、最近問題として取り
上げられ、ようやく定義の議論が始まった概念であり、
法令等においても定義及び取締権限について規定されていない。
そのため、監督官としても取締ができないのだ。

(以下、インタビュー「下」に続く)

(※注)   労基署はあくまで労基法違反の取締機関であり、
労働者のお悩み相談所としての役割・権限は与えられていない。
詳しくは本ブログの過去記事
「労働基準監督署にうまく動いてもらうための3つのポイント」
を参照のこと。

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