先日「ブラック企業大賞2013」が発表され、大方の予想通り
ワタミが大賞を受賞した。
「ブラック企業大賞唯一の2年連続ノミネート」
「一般参加のWeb投票では70%がワタミを選ぶ」
など不本意な記録更新のオマケつきである。
また、ほぼ同時期に
「入社2カ月で社員が過労自殺」とか、
「グループの介護施設利用者が死亡する事故が複数発生」とか、
「共産党が参院選の選挙演説でワタミを公然と批判」
など、いろいろと印象的な出来事が重なったこともあり、今や
ワタミはブラック企業の代名詞としてのイメージが定着して
しまったようだ。
しかし「ブラック企業の代名詞」といえば、他にも「ユニクロ」とか
「モンテローザ」とか、いろいろあったではないか。
なぜその中で、ワタミばかりがこれほどまでに叩かれるのだろうか。
理由はいろいろあろうが、ポイントの一つに
「情報開示のスタンス」
があると考えている。
この点、ブラック企業と評されているその他多数の会社や、
風評被害に苦しんでいる会社にも参考になろうかと思われる。
「情報開示のスタンス」の差が最もよく現れたのは、本年4月に
「日経ビジネス」で組まれた特集「それをやったら、ブラック企業」
における、「ユニクロ」と「ワタミ」の両経営者へのインタビューだろう。
「ブラック批判」に関するインタビューだから、普通ならあまり
受けたくはないテーマだ。しかし両社は受け、インタビューは
記事(ユニクロ:「甘やかして、世界で勝てるのか」、ワタミ:
「我々の離職率は高くない」)になり、結果として「炎上」に近い
反響があった。
興味深いのはその後だ。
不思議なことに、ユニクロへのブラック批判は少しずつ減って
いったが、ワタミへの批判はむしろエスカレートし、未だに
根強く続いているのである。
ではその差異に繋がった要素は何か?
ここではまず、インタビューに対する両社の対応の違いを
見てみよう。
【取材対応姿勢】
ユニクロ:柳井会長が積極的に対応
ワタミ :当初は広報から「答えたくない」との回答。
その後交渉を重ね、結果的に「桑原社長の手記を掲載」
する形で妥結
【回答内容】
ユニクロ:柳井氏が考える「人材教育」や、「グローバル市場で
勝つための方策」について
ワタミ :「ありがとうツアー」「みんなの夢アワード」「社員独立制度」
について
【ブラック企業批判に対して】
ユニクロ:「急成長のひずみがあったことは確か。
修正すべき点があった」
「離職率5割はさすがに高い。我々は店長の技術
ばかり教育していた。これが一番の問題であり、
失敗だと思っている」
「我々が本当にブラックなら、社員は辞め、会社は
ダメになっているはず。情熱を注いで働く社員が
いるから結果が出ている。だからこそ、根本的に
向いていない人には入社してほしくない」
ワタミ :「ビデオレターでコミュニケーションをとっている」
「離職率は業界水準からみると高くない」
「労働環境は格段によくなった」
だいぶ要約したが、このような内容であった。
皆さまもだいたい同じような印象を抱かれたことだろう。
両社とも、巷での「ブラック批判」に対して反論したいと
考えていた。
しかも、「自社のスタンスをきっちり知ってもらわないと、
反論の一部だけを切り取られて違った解釈をされてしまう」
と懸念していたところまで同じだ。
しかし、その後の行動が違った。
ユニクロは、向き合って説明した。
「我々はこういう企業である」
「我々は過去のやり方を反省して見直している」
「我々は今こんな努力をしている」
ということを、総合的に訴えたわけだ。
ワタミは、反論しなかった。
渡邉氏は「我々のことがちゃんと伝わっていれば、
週刊誌のくだらない記事など『くだらない』で終わるはず」
と考え、「事実とは違う批判をされること自体が問題である」
という態度をとったのだ。
そして話は最初に戻り、皆さんご存知のとおりの結果になった。
Webで投票した一般人のうち、実際にワタミで勤務したことが
ある人はどれほどいただろう。
結局、ブラックというイメージが独り歩きしているのだ。
同社よりもっと酷い実態の企業は他にも多数あるというのに。
ブラック企業という評判(風評被害含む)に対して有効な
対策はシンプルである。
「評判に対して真摯に向き合う」
「事実は事実として認めて、実態を明らかにする」
「疑問や懸念を、個別に回答することで払拭する」
ことだ。
実際、明らかにブラックな労働環境であっても、採用時に「RJP」
(Realistic Job Preview/組織の良い面だけでなく、悪い情報も
含めて事実を誠実に伝えること)をおこなっている会社では、
社員の定着率も高いのだ。
目立つブラック企業だけを叩いても、根本的な問題解決には
ならない。法制も必要だが、まず企業側で情報開示のスタンス
を徹底することで、入職後「こんなはずじゃなかった!」と感じる
人を少しでも減らしてほしいものである。
ワタミが大賞を受賞した。
「ブラック企業大賞唯一の2年連続ノミネート」
「一般参加のWeb投票では70%がワタミを選ぶ」
など不本意な記録更新のオマケつきである。
また、ほぼ同時期に
「入社2カ月で社員が過労自殺」とか、
「グループの介護施設利用者が死亡する事故が複数発生」とか、
「共産党が参院選の選挙演説でワタミを公然と批判」
など、いろいろと印象的な出来事が重なったこともあり、今や
ワタミはブラック企業の代名詞としてのイメージが定着して
しまったようだ。
しかし「ブラック企業の代名詞」といえば、他にも「ユニクロ」とか
「モンテローザ」とか、いろいろあったではないか。
なぜその中で、ワタミばかりがこれほどまでに叩かれるのだろうか。
理由はいろいろあろうが、ポイントの一つに
「情報開示のスタンス」
があると考えている。
この点、ブラック企業と評されているその他多数の会社や、
風評被害に苦しんでいる会社にも参考になろうかと思われる。
「情報開示のスタンス」の差が最もよく現れたのは、本年4月に
「日経ビジネス」で組まれた特集「それをやったら、ブラック企業」
における、「ユニクロ」と「ワタミ」の両経営者へのインタビューだろう。
「ブラック批判」に関するインタビューだから、普通ならあまり
受けたくはないテーマだ。しかし両社は受け、インタビューは
記事(ユニクロ:「甘やかして、世界で勝てるのか」、ワタミ:
「我々の離職率は高くない」)になり、結果として「炎上」に近い
反響があった。
興味深いのはその後だ。
不思議なことに、ユニクロへのブラック批判は少しずつ減って
いったが、ワタミへの批判はむしろエスカレートし、未だに
根強く続いているのである。
ではその差異に繋がった要素は何か?
ここではまず、インタビューに対する両社の対応の違いを
見てみよう。
【取材対応姿勢】
ユニクロ:柳井会長が積極的に対応
ワタミ :当初は広報から「答えたくない」との回答。
その後交渉を重ね、結果的に「桑原社長の手記を掲載」
する形で妥結
【回答内容】
ユニクロ:柳井氏が考える「人材教育」や、「グローバル市場で
勝つための方策」について
ワタミ :「ありがとうツアー」「みんなの夢アワード」「社員独立制度」
について
【ブラック企業批判に対して】
ユニクロ:「急成長のひずみがあったことは確か。
修正すべき点があった」
「離職率5割はさすがに高い。我々は店長の技術
ばかり教育していた。これが一番の問題であり、
失敗だと思っている」
「我々が本当にブラックなら、社員は辞め、会社は
ダメになっているはず。情熱を注いで働く社員が
いるから結果が出ている。だからこそ、根本的に
向いていない人には入社してほしくない」
ワタミ :「ビデオレターでコミュニケーションをとっている」
「離職率は業界水準からみると高くない」
「労働環境は格段によくなった」
だいぶ要約したが、このような内容であった。
皆さまもだいたい同じような印象を抱かれたことだろう。
両社とも、巷での「ブラック批判」に対して反論したいと
考えていた。
しかも、「自社のスタンスをきっちり知ってもらわないと、
反論の一部だけを切り取られて違った解釈をされてしまう」
と懸念していたところまで同じだ。
しかし、その後の行動が違った。
ユニクロは、向き合って説明した。
「我々はこういう企業である」
「我々は過去のやり方を反省して見直している」
「我々は今こんな努力をしている」
ということを、総合的に訴えたわけだ。
ワタミは、反論しなかった。
渡邉氏は「我々のことがちゃんと伝わっていれば、
週刊誌のくだらない記事など『くだらない』で終わるはず」
と考え、「事実とは違う批判をされること自体が問題である」
という態度をとったのだ。
そして話は最初に戻り、皆さんご存知のとおりの結果になった。
Webで投票した一般人のうち、実際にワタミで勤務したことが
ある人はどれほどいただろう。
結局、ブラックというイメージが独り歩きしているのだ。
同社よりもっと酷い実態の企業は他にも多数あるというのに。
ブラック企業という評判(風評被害含む)に対して有効な
対策はシンプルである。
「評判に対して真摯に向き合う」
「事実は事実として認めて、実態を明らかにする」
「疑問や懸念を、個別に回答することで払拭する」
ことだ。
実際、明らかにブラックな労働環境であっても、採用時に「RJP」
(Realistic Job Preview/組織の良い面だけでなく、悪い情報も
含めて事実を誠実に伝えること)をおこなっている会社では、
社員の定着率も高いのだ。
目立つブラック企業だけを叩いても、根本的な問題解決には
ならない。法制も必要だが、まず企業側で情報開示のスタンス
を徹底することで、入職後「こんなはずじゃなかった!」と感じる
人を少しでも減らしてほしいものである。