違法な労働状態を放置し、改善する気もない会社の総称として
「ブラック企業」というキーワードが昨年一気に広まったが、
一方で「ブラックバイト」なる言葉も生まれた。
その言葉通り、
「ブラックな労働環境のアルバイト」
ということであり、具体的には
「求人票に記載された内容とは違う仕事を命令される」
「厳しい売り上げ目標・販売目標を課される」
「試験期間でも休ませてくれない」
といった酷い扱いをされるアルバイトのことだ。
「所詮バイトなんだから、そんなに厳しい環境なら
辞めればいいのに…」
とお思いの方も多いかもしれないが、
状況はそれほど単純ではない。
この「ブラックバイト」という言葉を提唱した中京大学の
大内裕和教授は、「辞めたくても辞められない理由」として
次の3点を挙げて説明している。
1:経済的困窮
長きにわたる不況によって親の経済力が低下し、子に充分な
生活費を与えられない家庭が増加。
従って、アルバイト収入の使い道についても「遊ぶ金」だった
ものが「通学費」「教科書代」「携帯代」となり、さらにそれが
「学費」や「生活費」へと移行してきている。
「アルバイトをしなければ学生生活を送れない」学生が一定
割合存在しているというわけだ。
2:競争激化
勤務時間に融通の利くフリーターの増加により、アルバイト市場
における学生の価値が下がってきている。
アルバイトの面接で「いくつかの曜日は授業で入れない」と伝えた
ところ、5社連続で落ちたという学生もいるくらい。
そのため「もしクビになったら次はない」と思い込んだ学生は、
劣悪な環境であったとしても今の職場にしがみつくことになる。
3:職場の圧力
経費削減の名目で正社員が減らされた職場では、それまで
正社員が担っていた仕事や責任をアルバイトが担うことになり、
代替が難しい場合は職場としても簡単にクビにできない
状況に陥る。
悪質なところでは、学生が一般的な社会常識や労働法を
知らないこと、社会経験を積んでいないことなどにつけこんで、
「辞めたい」と言っても辞めさせないなど、法律違反の働き方
を強要するケースもある。
もちろん全ての学生バイトが当てはまるわけではないにしても、
少し年代が上の世代がアルバイトに対して抱く「気楽にできる」
「嫌なら辞める」といった感覚がそのまま通用するわけでは
ない実態もあるようだ。
せっかくの貴重な時間を費やして臨むアルバイトである。
ブラックな目に遭うのは割に合わない。
では応募したアルバイトがブラックバイトかどうか、どうやって
見抜けばいいのだろうか。そして、いかにして抜け出したら
いいのだろう。
(つづく)